カテゴリ:推薦図書( 7 )

健康な日を 三日ください

大島みち子さんという 昭和初期の 女学生さんの 闘病日記です。 軟骨肉腫という病気にかかってから 再発し 亡くなるまでの 1年間の思いや出来事が 綴られています。 この本を読んで 『 自分は ほんとうに 精一杯 生きているのだろうか 』 『 ちっぽけなことで 悩んでいて 申し訳ない 』 との思いでいっぱいになりました。 不朽の名作です。


病院の外に 健康で出られる日を 三日ください
一日目、 私は故郷に 飛んで帰りましょう。 そしておじいちゃんの肩をたたいて、 それから母と台所に立ちましょう。 おいしいサラダを作って、 父に熱燗を一本つけて、 妹たちと楽しい食卓を囲みましょう。
二日目、 私は あなたの所へ飛んで行きたい。 あなたと遊びたいなんて言いません。 お部屋を お掃除してあげて、 ワイシャツにアイロンを かけてあげて、 おいしいお料理を作ってあげたいの。 そのかわり、 お別れの時、 やさしくキスしてね。
三日目、 私は一人ぽっちで 思い出と遊びます。 そして静かに一日が過ぎたら、 三日間の健康をありがとうと 笑って永遠の眠りにつきます。

( 出展 若きいのちの日記  大島みち子 だいわ文庫 )

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by natuyasumi2010 | 2012-03-11 19:49 | 推薦図書

何千年たっても変わらないこと

遠い遠い昔のことです。 お釈迦様が生きていた時代ですから、 紀元前5世紀ごろでしょうか。 祇園精舎に 周利槃特という人がいました。 このひとは 何を聞いても忘れる人で、 自分の名前すら忘れるほどでした。 今であれば『知的障害者』と呼ばれていたかもしれません。 一方、 周利槃特のお兄さんである摩訶槃特は すこぶる頭のいい人でした。 学問にも秀で、 お釈迦様のお弟子さんの間でも 一目おかれる存在だったそうです。 周利槃特に 仏門に入ることを進めたのは お兄さんでした。 しかし、周利槃特は いつまでたってもお経を覚えることができないばかりか、 騒動を引き起こしてばかりいました。 その 後始末のために、 摩訶槃特は 毎日のように 走り回らなければなりませんでした。 

そんなある日、 悲しいことが起こりました。 摩訶槃特が、 『 お前がいては 迷惑がかかるばかりだから、 ここを去れ 』 と言って、 周利槃特を 祇園精舎から 追い出してしまったのです。 途方にくれた 周利槃特は、 門の外で  ただひとり泣くばかりでした。 しばらくすると、 そこを お釈迦様が 通りかかりました。 周利槃特を 目に留めたお釈迦様は、 そっと近づいて こう語りかけました。 『 お前には お前の道がある。 明日からこの言葉を唱えながら 掃除をしなさい 』 そして、 『 塵を払わん、 垢を除かん 』 という言葉と ほうきを与えたのです。 

祇園精舎に連れ戻された周利槃特は、 来る日も来る日も この言葉を唱えながら ほうきで掃き続けました。 はじめは、 誰もその姿に 見向きもしませんでした。 しかし、 時がたつにつれ、 ひとり またひとりと 周利槃特のもとを訪れる人が増えていきました。 その一心に掃除をする姿が尊く 思わず手を合せたくなるほどだったからです。 そして お釈迦様は 無言で説法できるものとして、 周利槃特を 修行最高段階の地位と言われる 16羅漢の一人に選んだのでした。 

この お話をされたご住職は 私の目をまっすぐに見つめながら こうおっしゃりました。
人間の幸せは、 モノやお金ではありません。 
人間の究極の幸せは 『 人に愛されること 』  『 人に褒められること 』  『 人の役に立つこと 』 そして 『 人から必要とされること 』  この4つなのです。 


( 出展 利他のすすめ 日本理化学工業会長 大山泰弘 WAVE出版 )

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by natuyasumi2010 | 2012-02-23 12:07 | 推薦図書

一歩を越える勇気  - 夢を志に変える -

夢を持つと まず自分自身が変わり、次第にまわりを変えてゆき、さらには日本や世界までも 明るい方向へかえてゆくことができると信じている。 今でこそ、こんなことを言っているが、僕は高校を卒業したあと、夢や目標などない一年間を過ごしていた。 ましてや山登りに興味は全くなかったし、 『 エベレストから冒険の共有をしたい 』 と思うようになったのも、ここ最近の話だ。 

子供のころは、 『 ウルトラマンになりたい 』 などの無限の可能性を 本当に信じていたと思う。 しかし、大人になるにつれて 徐々に 『 理想 』 と 『 現実 』 のギャップに翻弄され、 夢は夢のままで終わるのが当たり前だと思うようになってしまった。 だがそれに負けてはいけない。 夢を語れる大人が日本を変えると、僕は本気で考えている。 夢には2種類ある。 それはかなう夢とかなわない夢だ。 それには法則があって、かなう夢は必ず世のため人のためを考えていて、たくさんの人たちが支えてくれる。 逆に、自分の欲望を満たすだけの夢を持っても、誰も応援してくれることがなく、かなわなくなってしまうと思っている。

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そして、夢をかなえるために必要なのは、夢を志に変えること。つまり、世の役に立つことのため自分の命を果たす覚悟を持つことだ。 僕が命をかけてでもエベレストからのインターネット中継をやりたいのは、自分と同じようにたくさんの人が持っている 『 不可能という心の壁 』 を取っ払いたいからだ。 できないと思ってやめてしまったら絶対にできないけれど、それは自分の心が決めているだけで、本当はやってみたらできるということが、絶対に多いのだと思う。 それを伝えたいから、僕はエベレストを目指し、毎日走りまわって、実現に向けて動いているのだ。 そう考えて行動するようになってから、環境がどんどんいい方向に変わり、出会う人も多くなってきた。 そして、そこに 『 必ずやる 』 という信念ができるようになり、 遂には 『 必ずやり遂げられる 』 という大きな自信が持てるようになってきたのだ。

最近ではいろいろなところに講演に呼んでもらうことが多くなってきている。 それも最初から数が多かったわけではないのだが、 『 講演をすることで、山で学んだことを人に伝えて、元気になってもらいたい 』 と思って話すようになってから自然と口コミで広がり、今では全国をまわらせてもらえるようになってきた。 おかげさまで充実した毎日を過ごすことができていると思う。 夢は自分とまわりを明るくし、志は世界を良い方向にもってゆく。 極限の困難を乗り越えた 『 登頂 』 はもちろん嬉しいが、その感動を共有できる人がいたらその喜びは何倍にもなるのだ。

( 出展  栗城史多 『 一歩を越える勇気 』 サンマーク出版 )

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by natuyasumi2010 | 2011-12-09 16:38 | 推薦図書

氷の親子

『 四つ話のクローバー 』 という 水野敬也さんが書いた本があります。 水野敬也さんといえば 『 夢をかなえるゾウ 』 の著者ですが この本は自己啓発の本というより 感性のまま 自分の想いを表現した本です。 子供を持つ父親の気持ちを感じ取れるよう 父性を上手に表現しています。 男性は お母さんが妊娠しても 自分が胎動を感じることが無く 実感がわきにくいので なかなか父性が育ちにくいという傾向がありますが、 父性教育の参考になればと思い 一部を省略し抜粋しました。 興味のある方は ぜひ読んでみてください。

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ここは営業時間の終わった 夏の夜の遊園地です。 静まり返ったジェットコースター乗り場で、 コンコンと ジェットコースターの機体をたたく音が響きました。 『 誰だ? こんな時間に 』 ジェットコースターが眠そうな目を開いて見ると、 そこに立っていたのは氷の熊でした。 氷の熊は言いました。 『 夜分遅くに 大変申し訳ありません。 わたくし熊五郎と申します 』 ジェットコースターは不思議そうな顔でたずねました。 『 これはまた 珍しいお客だね。 何の用だい? 』 『 あの~ この遊園地の 夏の特設会場 “ 氷の動物園 ” はご存知でしょうか 』 『 ああ 知っているよ 』 『 あれは 真夏に氷のひんやり感を楽しんでいただこうという趣向で、 夏休み限定で設けられた会場でした。 そして今日、 夏休みが終わり  “ 氷の動物園 ” は閉鎖されてしまったのです 』 『 そういえば ついさっきまで 大勢の人が作業していたねぇ 』 『 はい。 ですから “ 氷の動物園 ” に展示されていた 私たちは 外に出されてしまったのです。 会場内はとっても冷たかったのですが 暑い外に出されてしまったので どんどん体が溶け始めているのです 』 見ると、ほんのわずかの間に 熊五郎の足元には水たまりができていました。 『 そうだ。 “ アイスワールド ” に行けばいいじゃないか。 あそこは –20℃だからとっても冷たいし 』 しかし、 熊五郎は悲しそうな顔で言いました。 『 私も最初はそう考えました。 しかし あそこは 頑丈な鉄の扉に鍵がかかっており どれだけ 頑張っても扉を開けることができなかったのです 』 『 それはお気の毒に・・・・ 』

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しばし沈黙のあとジェットコースターは顔を上げて言いました。 『 それで、 一体わたしに何の用なんだい? 』 『 それが ・・・ お恥ずかしい話なんですが 』 『 なんだい。 何でも言ってくれよ。 同じ遊園地の仲間じゃないか 』 『 それでは ・・・・ 』 と熊五郎が話そうと思った時でした。 熊五郎の足元に 小さな熊があらわれて 熊五郎にまとわりついてきたのです。 『 ねえ、 おとうさん、 まだ? 』 その小さな熊も、 やはり 氷でできていました。 熊五郎は諭すような口調で言いました。 『 小太郎。 今、 ジェットコースターさんにお願いしているところなんだ。 向こうで待っていなさい 』 『 はーい 』 残念そうに返事をすると、 小太郎はジェットコースターを振り返りながら、 とぼとぼと元いた場所に戻って行きました。 その姿を見ていたジェットコースターは、小太郎に声をかけました。 『 坊主、 乗りたいのか? 』 小太郎は振り返って 『 うん! うん! 』 と何度もうなずきました。 ガシャン! 突然、 ジェットコースターの座席の安全バーが上がりました。 小太郎は 『 うわぁ 』 と目を輝かせました。 熊五郎は驚いてたずねました。 『 よ、 よろしいんですか? 』 『 ああ 』 ジェットコースターは微笑んで言いました。 『 あ、 ありがとうございます! 』 『 礼は後だ。 さあ、 乗った乗った 』 熊の親子が座席に乗り込むと安全バーが下がりました。 そしてジェットコースターの機体がゆっくりと動き出しました。 『 やった! いやっほぅ~! 』 小太郎は床につかない足をぶらぶらさせて遊んでいます。 『 こら 小太郎。 はしゃぐんじゃない 』 小太郎は 『 は~い 』 と答えましたが、 顔は喜びでいっぱいでした。 ジェットコースターは、 ガタガタと音を立てながら ゆっくりと坂を登って行きます。 そして頂上にやってくると ジェットコースターは体に ぐぐぐっ と力をこめて 『 さあ ここから すごいぞ~! 』 言い、 熊の親子が安全バーを握りしめたのを確認すると 『 ひょおおぉぉぉ~ 』 と全速力で走り出しました。 そして 夜の遊園地に 熊の親子の叫び声が響き渡ったのでした。

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『 本当に、 ありがとうございました 』 ジェットコースターを降りた熊五郎は深く頭を下げました。 『 すみません、 座席を濡らしてしまって 』 熊五郎は自分たちの座っていた座席を見て言いました。 ジェットコースターは 熊五郎の体が少しづつ溶けているのを見ながら 『 いいんだ 』 と 悲しそうにつぶやきました。 『 さあ行くぞ小太郎 』 熊五郎は小太郎の手を引いて歩き出しました。 小太郎は 『 ジェットコースターのおじさん! じゃあね! 』 と小さな手を力いっぱい振っています。 ( おいおい、 そんなに手を振ったら 君の体が溶けてしまうよ ・・・・ ) ジェットコースターはそう思いましたが、 口にすることはできませんでした。 ただ、 黙ったまま、 親子の背中を見守っていました。

熊の親子が 次にやってきたのはお化け屋敷でした。 熊五郎が事情を説明し、 小太郎が遊園地をとても楽しみにしていること、 溶けてなくなる前に小太郎を楽しませてあげたいことを話すと、 お化け屋敷の中から、 一つ目小僧、 お岩さん、 のっぺらぼう、 ぬりかべなどのお化けが ぞろぞろと姿を現しました。 『 ・・・・ しかしまあ 遊園地の従業員もひどいことをするもんだねぇ。 用済みになったらポイなんて、 私たちお化けでも そんなひどいことはしないよ 』 お岩さんが大きく腫れあがった目を真っ赤にさせて怒っています。 ひときわ大きな体を持ったぬりかべが太い声で言いました。 『 とにかく、 できる限りのことをしてみようじゃないか 』 すると、 『 そうだそうだ 』 『 やってみよう 』 と他のお化けたちからも声が上がりました。 『 あ、 ありがとうございます 』 熊五郎は何度も深いおじぎをしました。 そして、手をつないだ熊の親子はお化け屋敷の入り口に、 おそるおそる足を踏み入れたのでした。

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『 ・・・・ すまなかったね あんまり怖がらせられなくて 』 一つ目小僧が申し訳なさそうに言いました。 『 いえ 悪いのは皆さんではありませんから 』 お化け屋敷の出口で熊五郎は頭を下げました。 お岩さんが言いました。 『 やっぱり、 お化けってのは 正体が分からないから怖いみたいなところがあるからね ・・・・。 最初に姿ばらしちゃうと、 どうも緊張感がね・・・・。 』 お化け屋敷の出口から ぬりかべが姿を現しました。 両手で小太郎を高く持ち上げています。 小太郎は 『 きゃはは! きゃはは! 』 とはしゃいでいました。 その姿を見て熊五郎は言いました。 『 あの子も、 みなさんが現れると怖がるどころか、 なついてしまうものですから。 』 そして熊五郎はまた頭を下げました。 熊五郎が頭を下げるたびに、 ぽたり、 ぽたりとしずくが地面に垂れました。 『 ほら、 小太郎行くぞ。 ぬりかべさんにお礼を言いなさい 』 ぬりかべはそっと小太郎を地面におろしました。 小太郎は、 『 ぬりかべさん、 遊んでくれてありがとうございました! 』 と行儀よく頭を下げました。 その様子を見たお岩さんは袖で目をおおって 『 ううっ ・・・・・ 』 と泣き出しました。 『 こら。 お化けが泣くんじゃない 』 一つ目小僧が お岩さんを肘で小突きました。 しかしお岩さんは泣き止みませんでした。 『 あんなかわいい子が ・・・・ 残り少ない命だなんて。 そんなの、 本気でおどかせるわけないじゃないか 』 『 ああ ・・・・・ そうだな 』 そういってうなづいた一つ目小僧の大きな瞳にも、 涙がにじんでいるのでした。 

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それから熊の親子はたくさんのアトラクションに乗りました。 高いところから一気に落ちるフリーホール。 ぐるぐると回転しながら動くトップスピン。 キラキラ光るメリーゴーランド。 遊園地を廻るトロッコ列車。 小太郎は大はしゃぎしています。 しかし、熊五郎は焦っていました。 蒸し暑い夏の夜は、 容赦なく二人の体を溶かしていきます。 小さな小太郎の体は、目に見えて溶けて小さくなっていました。 熊五郎と小太郎は次のアトラクションを目指して歩いていました。 そのときでした。 『 あ ・・・・・ 』 熊五郎はふと足を止めました。 そして興奮して叫びました。 『 小太郎、 助かるかもしれないぞ! 』 そして熊五郎は全速力で走り出しました。 熊五郎がやってきたのは売店の前にあるアイスクリームボックスでした。 この中なら氷の体が溶けるのを止められるに違いありません。 しかしアイスクリームボックスには鉄の鎖が巻かれ、 南京錠がかけられていました。 熊五郎は迷わず鎖を手に取って、 思い切り引っ張りました。 バリン! 大きな音がしました。 しかし、 取れたのは鎖ではなく熊五郎の手のほうでした。 氷の腕では鉄の鎖を砕くことはできなかったのです。 しかし熊五郎は取れてしまった腕をもう一方の手でつかんで、アイスクリームボックスの扉に打ちつけました。 ガン! ガン! ガン! 『 お父さん、 やめて 』 小太郎の言葉も聞かずに、 熊五郎は、 何度も自分の腕を打ちつけました。 しかし壊れてゆくのは熊五郎の腕のほうで、 アイスクリームボックスの扉は少しへこんだだけでした。 『 お父さん ・・・・・ 』 熊五郎が振り向くと、 そこにはまた少し小さくなった小太郎がいました。 『 小太郎 ・・・・・ 』 小太郎はおぼつかない足取りで熊五郎に駆け寄り、 か弱い声で言いました。 『 お父さん、 僕、 観覧車に乗りたい 』

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熊五郎と小太郎は坂を登り、 遊園地の一番高いところにやってきました。 熊の親子がやってくると観覧車は扉を開けて待っていました。 『 君たちのことは、 ここからずっと見ていたよ。 さあ、 乗りなさい 』 熊五郎と小太郎が観覧車の中に入ると、 扉がすーっと閉まり、 ギィ という音を立てて観覧車は動き始めました。 

ギシギシと金属の擦れる音を出しながら 観覧車のカゴがゆっくりと上がってゆきます。 熊五郎は小太郎が外の景色を見られるように、 窓際まで体を持ち上げました。 遊園地の周りには森が広がっており、 空には星がキラキラと輝いています。 『 きれいだね ・・・・・・ 』 小太郎が言いました。 『 ああ、 きれいだ 』 熊五郎は力のない声で言いました。 それから二人はずっと外の景色を見ていました。 カゴが揺れる音の合間に、ピタッ ピタッ としずくの垂れる音が響いていました。 『 ・・・・・ 僕、 もうすぐ死んじゃうのかな 』 小太郎が、 小さな声でポツリとつぶやきました。 熊五郎は言いました。 『 大丈夫だ。 お前は死なない。 お父さんが何とかする 』 『 でも ・・・・・ 僕の体、 どんどん小さくなっちゃってるよ 』 小太郎は、 夜の闇に消え入りそうな、 小さな声で言いました。 『 お父さん。 僕、 怖い ・・・・・ 』 この日、 どんなに怖いアトラクションでも楽しんでいた小太郎は、 今、 観覧車の中で、 熊五郎に抱きかかえられながら震えていました。 しかし熊五郎は小太郎をただ抱きしめることしかできませんでした。 熊五郎は、 私はどうなってもいい。 この子さえ助かれば 私はどうなってもいい。 熊五郎は小太郎を強く守るように抱きしめました。 

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『 お父さん ・・・・・ 』 小太郎は震える声で言いました。 『 お父さん、 僕ね、 外に出られてよかったって思ってるんだ 』 そして小太郎は、精一杯の笑顔を作って言いました。 『 氷の動物園にいたときはさ、 すぐ 動いちゃだめ! って言われるから、 だから僕、 ずっと我慢してたんだ。 僕、 ちゃんと我慢できたでしょう? 』 『 ああ、 ああ 』 熊五郎は何度もうなずいて言いました。 『 お前はよく頑張ったぞ 』 『 えへへ 』 小太郎は照れくさそうに笑いました。 そして、 過去を思い返すように言いました。 『 僕ね、氷の動物園の中でじっとしながら ジェットコースターってどういう乗り物なんだろう って 毎日毎日考えてたんだ。 だって、動物園の中で聞こえるのは、 ジェットコースターの ゴゴー っていう音と、 お客さんたちの キャー っていう声だけなんだもん。 だから今日、 お父さんが 遊園地の乗り物に行くぞって言ってくれたとき、 もう、 飛びあがっちゃうくらいうれしかったんだ 』 『 そうか ・・・・・ 』 熊五郎はうなずきながら言いました。 『 ジェットコースターは楽しかったか? 』 小太郎はすぐに答えました。 『 うん、 楽しかった! 』 熊五郎が優しく微笑むと、 小太郎は顔を上げて熊五郎を見つめました。 そして、 最後の力を振り絞るようにして言いました。 『 お父さん、 僕ね、 今日が生まれてから一番楽しい日だったんだよ 』 『 小太郎 ・・・・・・ 』 『 僕、 お父さんの子供でよかった。 ありがとうね、 お父さん ・・・・・ 』 熊五郎は 『 小太郎! 小太郎! 』 と何度も名前を呼びました。 しかし、 もう、 小太郎の小さな体が反応することはありませんでした。 そして、 観覧車の中には、水の滴が床に落ちる音だけが響いていました。

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それからしばらくしてからのことでした。 ドン! 突然、 衝撃を受けた観覧車のカゴが大きく揺れました。 観覧車は何事かと思い 様子を見ると、カゴの中の熊五郎が、 壁を思い切り蹴りつけていました。  ドン! ドン! ドン! ドン! ドン!  熊五郎は何度も蹴りつけています。 それは、 やり場のない怒りをぶつけているように見えました。 観覧車は、そんな熊五郎の姿を見て哀れに思いました。 じっと黙ったまま、 自分の体が蹴られるのを見ていました。 熊五郎は、 ぶつけた衝撃で取れてしまった足を拾うと、今度はその足を壁に打ちつけました。 いたたまれなくなった観覧車は言いました。 『 もうやめなさい。 そんなことをしても ・・・・・ 』 熊五郎はなにも答えませんでした。 ただ、 バラバラに飛び散った自分の破片を注意深く見つめていました。 そして、 かけらの一つを手に取ると小太郎の体に持っていきました。 そして ていねいに形を整えたのです。 『 お父さん ・・・・・ 』 小太郎の声が少しだけ聞こえました。 すると熊五郎は、さらに別の破片を拾って小太郎につなげました。 それから熊五郎は、 地面に飛び散った破片を注意深く選んでは、 小太郎の体にくっつけてゆきました。 こうして熊五郎は、 自分の体を崩しながら小太郎の体を元に戻していったのです。 小太郎は今にも泣き出しそうな声で言いました。 『 お父さん。 こんなことしたらお父さんの体が ・・・・・ 』 熊五郎は 『 いいんだ 』 とだけ言うと そして時間をかけて、 小太郎の体を直していきました。 小太郎の体が直ると 熊五郎は言いました。 『 観覧車さん。 扉を ・・・・・ お願いします 』 観覧車は言われたとおり扉を開きました。 熊五郎は、 抱えていた小太郎を座席の下に優しく置くと言いました。 『 さあ ・・・・・ 行きなさい 』 熊五郎は片手をぎこちなく伸ばし、 遊園地を指差しました。 『 もしかしたら、 まだどこかに、 体が溶けるのを防いでくれる場所があるかもしれない ・・・・・ だから ・・・・・ 』 熊五郎は何度も呼吸を整えながら言いました。 小太郎は不安そうに熊五郎を見上げて言いました。 『 お父さんは? 』 熊五郎は自分の体を見ました。 ぼろぼろになった体は、もう満足に動きませんでした。 『 父さんは ・・・・・ ここに残る 』 『 どうして? 』 小太郎は言いました。 『 お父さんが一緒じゃなきゃ嫌だ! 』 そして小太郎は座席の上によじ登り、 小太郎の体にすがりついて言いました。 『 僕、 お父さんと離ればなれなんていやだ! お父さんと一緒にいる! 』 すると小太郎の頭に、 ぽたり、 ぽたり と滴が流れ落ちました。 その滴は、溶けた体の水滴ではなく、 熊五郎の瞳から流れ落ちる涙でした。 『 小太郎、 頼むからそんなことを言わないでおくれ 』 熊五郎は小太郎の頭に優しく手を置きました。 『 私はお前に生きて欲しいんだ 』 そしてもう一度、 力強く言いました。 『 お願いだ、 小太郎。 生きてくれ 』 小太郎はしばらくの間、 熊五郎の胸に顔をうずめていました。 しかし、 ゆっくりと体を離すと、 座席の下に降りました。 そして、 『 お父さん ・・・・・ 』 最後にそうつぶやくと、 ギュッ と目を閉じて、 暗闇に向かって走り出しました。

小太郎の後ろ姿を見送ってから、 熊五郎は言いました。 『 先ほどは、 すみませんでした 』 『 ん? 』 『 いきなり体を蹴ったりして。 傷をつけてしまいました 』 すると観覧車は 『 そんなことか 』 と笑いながら言いました。 『 気にすることはない。 どうせオンボロの観覧車さ 』 そして二人はそのまま口を閉じました。 しばらくすると熊五郎が顔を上げて言いました。 『 私は 私のしたことは間違っていたのでしょうか? 私たちはずっと一緒にいるべきだったのでしょうか 』 『 いや 』 観覧車は深くうなずくように言いました。 『 もし君さえ良ければ、 もう一度回ろうと思うが どうかね? 』 熊五郎は静かに頭を下げて言いました。 『 お願いします 』 その言葉を聞くと、 観覧車は扉を閉め、 動き始めました。 ギィ ギィ と金属の擦れる音を出しながら熊五郎だけを乗せた観覧車のカゴはゆっくりと上っていきます。 熊五郎は観覧車の窓から夜空を見上げました。 そこには手を伸ばしたらつかめそうなほど近くに、 たくさんの星たちが輝いていました。

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あくる朝。 遊園地の係員が “ アイスワールド ” の鉄扉の前にやってくると、 扉のすぐそばに置かれていた発泡スチロールの箱がゆっくりと開きました。 そして “ アイスワールド ” の扉が開くと同時に、 箱から出てきた小さな氷の熊がするすると中に入っていきました。 『 なんだ? 』 係員は足元を何かが通り過ぎた気がしましたが、 気のせいだと思いそのまま始業の準備を始めました。 

その様子を高台から見ていた観覧車は感心してつぶやきました。 『 遊園地のどこかで発泡スチロールの箱を見つけたようだな 』 そして観覧車は、 『 あの子は本当に賢い子だ ・・・・・ なあ 熊五郎さん 』   誰もいない、 濡れているだけの座席に語りかけたのでした。
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by natuyasumi2010 | 2011-08-06 14:35 | 推薦図書

一歩を越える勇気

『 一歩を越える勇気 』 という 登山のドキュメンタリー本があります。 フリーターで 引きこもり 母親も癌で死んでしまい 彼女にも逃げられた。 そんな どん底青年 栗城史多さんが 孤立無援の中  何もないところから 多くの賛同者や応援者を作り上げてゆく。 そして 普通の大人では とても成し得ないような 素晴らしい結果を創り出してしまう。 そして 最後には あのエベレストを 無酸素登頂してしまう。  『 こいつはすごい 面白い!! 』 と感じいった一冊です。 深く切り込んだ物事の捉え方をしていて 気に入った部分を抜き出してみました。 興味のある方は ぜひ読んでみてください。

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僕たちは 命をかけて山に登っていて、それはときに 『 冒険 』 とも呼ばれる。 しかし、たくさんの人にとって、なぜ そんなことを わざわざやるのか? と、 アホみたいに見えることもあると思う。 でも 僕は 冒険は人類にとってすごく大切なことだと思う。 人間の祖先にも、木の上で生活していた時代があった。 木の上にいれば安全だけれど、木の実など 手に入る食材はそのうち底を尽いてしまい、木から下りて 誰かが開拓しなければいけない時が来る。 けれども、地上の世界には猛獣がいたり、 今まで知らなかったような危険がたくさんあったりする。 そのリスクを冒してまで地上に降りたいと思うことは、もしかしたら少なかったかもしれない。 でも、今この時代に火があったり お米が食べられたりするのは、 誰かが木を降りて開拓したからなのだ。 誰かが勇気を持って 地上に一歩を踏み出さないといけない。 だから 誰かが 誰も踏み出せなかった一歩を 踏み出さなければいけない。 そして それは それを見ている人たちの 可能性を広げていくことでもある。 『 自分にでも できるかもしれない 』 『 あっちには もっと希望の世界があるかもしれない 』 そう思ってもらい、 一歩を踏み出すための 背中を押してあげること。 それが冒険家の役割なのだ。

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誰もが生きている中で 冒険をしていると思う。 毎日学校に行ったり、働いたりしている中で、誰もが 何かを越えなければならない事態に直面する。 受験や就職といったの大きな出来事もそうだし、 ちょっと苦手なことをやるとか、自分が意固地になっていたことを止めてみる とか、そういうことも冒険なのだと思う。 そんなとき 誰かが少し 目の前のことに立ちすくんでしまうときに、僕たちの挑戦が、誰かの可能性を広げる手助けになればいいなと思っている。 

あんなお兄ちゃんだってできたんだから、僕もやってみよう。 そんなふうに思ってくれる人が 一人でも増えたら、僕が命をかけて山に登っている意味があるんじゃないかなと思う。

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by natuyasumi2010 | 2011-07-06 16:50 | 推薦図書

幸せを招く言葉

熊本県の小国町に 素晴らしい坐禅の師匠がおられます。 講話を聞くたび 『 ああ 今日も 良いお話を聞けた。 よかった よかった 』 と 充実した気持ちになって 帰ってきます。 今回は 講話の中で 特に心に響いた部分を ご紹介いたします。 

楽しいこと 嬉しいこと ありがたかったこと このような 前向きな言葉を 口にするように心がけていると 知らず知らずのうちに 言葉に出したことと 同じような 善きことが 訪れますよ。 不思議と思われるかもしれませんが 言葉には 思ったことを呼び寄せてしまうという 不思議な性質があるからです。 

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『 言霊 』 という言葉があるように、言葉には 不思議な力があります。 いつも 心に善意を持ち 人に喜ばれる 善きことを 言葉にして 善きことを行い 善きことを待ちましょう。 たとえ 困難なことがあっても  自分ができる 精一杯の 善い行いをして 『 果報は寝て待て 』  です。 精一杯やって 心に 光と   暖かさを 持ちながら 人に喜びを与え続けると 不思議なことに 善い結果 善い縁 善い助けは 向こうからやってきます。 子育ても同じです。

逆に 面白くないこと つらいこと 悲しいこと 腹のたつこと このような不平や不満ばかりに目を向け 言葉にしていると、 知らず知らずのうちに このようなことを引き付けてします。 

日本人は 伝統的に 思考が否定的な民族です。 よく おばあちゃんの口癖を思い出してみてください。  『 それは大変ね 』 『 だいじょうぶかね 』 といった 否定的な言葉がたくさん出てきます。 ニュースでも 新聞でも 『 不景気だ 政治が悪い こんな事故があった こんな不幸があった 』 という否定的な内容がほとんどです。 このようなことを言っていると このようなことを引き付けてしまいます。 

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by natuyasumi2010 | 2011-06-27 13:03 | 推薦図書

夢をかなえるゾウ

                   『夢をかなえるゾウ』 という 単行本があります。
          なにげなく 手にとってみたのですが なかなか 面白かったので 購入しました。
                 なかなか 奥深い本だったので 一部を抜粋してみました

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これからはな 毎日寝る前に 自分がその日 上手くいったことや 頑張ったことを 
思い出して 『ようやったな』 って 自分のこと褒めてみ。 じぶん こんなこと聞いて 馬鹿にしとんのかって 思うかもしれんけど こうやって 自分自身が 頑張れているのを 認めるのは めっちゃ 大事なことなんやで。 何でか分かる? それはな 成長したり 頑張ることは 『褒められること』 なんや、 『すごいこと』 なんや て、自分に教えてゆくためやねん。 だいいち 自分の周りに 『おまえ ようやったな』って ほめてくれるやつ自体 おらんやろ。

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それに 『頑張らなあかん』 て、どんだけ思うても なかなか頑張れんやろ。 何でそないなると思う? それはな 『頑張らなあかん』 て 思うこと自体が楽しないからや。 人間は楽しいことや やりたいことしか やらんようになっとるんや。 じぶん 手塚治虫くんてしってるやろ。 『ジャングル大帝』 とか 『鉄腕アトム』 描いた すごいやつや。 手塚くんは 死んでしまうまえ 病気で入院しとったんやけど 最後の最後まで 漫画 書いとったんよ。 こう聞くと すごい と思うかもしれんけど 彼 もう死んでしまうって分かってんのに いまさら 『努力しよう』 とか 『我慢して頑張ろう』 思うて 書いたんやろか。 違うよな。 あともうちょっとで 死によんのに そんな努力なんて無駄よな。 せやけど 漫画 書きとうてしょーがなかったからなら ついつい 描てしまうよな。 やりたかったから やってしもうた。 これ すごいことなんやろか むしろ フツー のことやん。

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でも 自分らは 心の底ではやりたくないことを 無理やりやろうとするやろ。 努力しようとするやろ。 頑張ろうとするやろ。 そんなもん 続くわけないで。 なんちゅうても 本音はやりたないんやから。 せやから 心の底を 変えてしまうねん。 毎日寝る前に 自分がその日 上手くいったこと 頑張って良くできたことを 褒めてやんのや。 これをずっと繰り返してみ そのうち 頑張ったり 成長したりすることが 楽しいと 感じるようになるから。 楽しゅうなったら あとは しめたもんや
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by natuyasumi2010 | 2011-06-14 09:16 | 推薦図書